ヴォースとは??
ヴォースとは英語のVOS(ヴィオーエス)をそのまま読んだものです。VOSは、Voluntary Observing Ships の略で、篤志(ボランティア)観測船のことです。わたしたちは、民間の船舶に観測装置を取り付けてもらい、海水の温度・塩分・pHなどを計測してその結果を誰もが利用できるよう公開しています。
なぜヴォースなの??
地球表面の約3分の2は海洋でおおわれ、地球上にある水の97%以上が海水です。その海水には大気の約50倍の二酸化炭素が溶け込んでいると言われています。地球環境の変動は海の役割を正確に知らずには理解できません。しかし、実は海で起こっていることにはまだ分からないことがたくさんあります。広い海を知るために、衛星、ブイ、観測船などをつかって、またいろいろな国が協力して研究を進めています。世界中の海を航行している民間船舶も、航海中に計測できるデータを集めて海洋の仕組みの解明に貢献できる機能を持っているのです。
なぜNPOなの??
海洋の調査や観測はいろいろな方法で行われています。まず、国や大学などが運用している調査船では、高度な機器を使用した専門家による精度の高い実験や観測が行われていますが、毎月同じ海域で同じ項目を繰り返し計測するといった反復的あるいは時系列観測には必ずしも適しているとはいえません。海面から海底までの間の観測を行うにはある点に固定した係留ブイなどによる観測が不可欠になりますが、広い海域を多数のブイでカバーすることは容易ではありません。そこで国際的な協力により、水深1,000m付近を浮遊するフロートを世界中の海域に投入し、一定期間後に水深2,000mから海面に浮上させる途中で水温、塩分を測定し、衛星経由で観測データを送信するというArgo計画が推進されています。一方、衛星から地球を観測する技術も進んでいます。各種のセンサを衛星に搭載して地球を廻る軌道から観測する方法は、地球規模という空間的な広がりをカバーする上で理想的な方法ですが、衛星の観測データをより正確に解釈するためには実際に陸上や海上で実測したデータが重要な役割を果たします。
同一航路を反復航海する民間船舶を利用した観測は計測項目や手法にはいろいろな制約がありますが、空間的、時系列的に観測データを蓄積できる点では優れています。世界中の海を縦横に航海している民間船舶は、エンジンを冷却するために、たえず船底から海水を取り入れています。この海水を利用して、水温や塩分、pHなどを連続的に測定する装置を設置して、船の入港毎にセンサの維持管理作業を行い、回収したデータを整理して公開すれば、世界中の多くの人々や機関に利用してもらうことができます。こうした多くの関係者の協力により維持される枠組みを円滑に機能させるためには、公益性と機動性を備えた特定非営利活動法人が果たす役割が大きいと確信します。
|