ヴォースとは??


 大洋を航行する船舶は古くから海上気象などの観測データを通報する伝統を持っています。19世紀の半ばから組織的に始まった船舶による観測は、もともとは航海の安全のために始められたものでしたが、現在は、世界気象機関(WMO)が加盟国の国際観測通報船舶として定めた船舶から集められた、気温、気圧、海面水温、風向・風速など大量のデータが、海洋と大気間の物質やエネルギーの流れを研究することなど、いろいろな解析に役立てられています。船舶の航行に必要な気象情報は世界中どこにいてもすぐに正確にわかる時代になりましたが、地球の温暖化など地球規模の気候変動に対する海洋の役割を解明するために一般船舶による観測の重要性が見直されているのです。

 民間船舶にできることは、大洋における気象観測に限りません。陸域からの強い影響を受ける沿岸を航行する船舶も、その影響の度合いを調べる目的で、大きな貢献をしています。たとえば、日本の国立環境研究所では、人間活動の影響を受けやすい沿岸海域から縁辺海域を対象として既に1991年からフェリーボートを篤志観測船として利用した海洋環境モニタリングを実施しています。また欧州でも、例えばフィンランドの海洋研究所では、1992年からバルト海を往復するフェリーでクロロフィル量や植物プランクトンの種類などの観測活動をはじめていますし、このような動きが、EUが進めている欧州の沿岸海域を航行しているフェリーを使用したFerry-Box と呼ばれる海洋環境モニタリング計画の推進につながっています。