海水が熱を蓄える性質をもつため、海に面した地域の気候が内陸部より穏やかであることは良く知られています。熱を蓄えた海水は、風、水温と塩分濃度によって決まる海水の密度の違い、地球の自転などによって、移動と混合を起こし、熱エネルギーや二酸化炭素など海水に溶け込んでいる物質を輸送しています。また、植物プランクトンは、光合成によって二酸化炭素を取り込んで有機物を生産しますが、生産された有機物の一部はやがて深海底に沈下して、炭素を海洋表層から深層へ移動させます。 このように、水温と塩分は海洋における基本的な物理量といえ、クロロフィルaを指標とした植物プランクトンの現存量は、海洋における炭素循環の基礎的な情報であると表現できます。
私たちが推進しているVOS活動により取得されるデータは海洋表層の限られた項目ですが、同一海域を繰り返し計測し時系列データを蓄積することにより、海洋変動の機構を解明することに貢献できる部分があります。
現在使用しているセンサの機器としての精度は、以下のとおりです。
水温: |
0.001deg.C |
塩分: |
0.005(psu) |
また、2002年2月から2005年11月まで、蛍光光度計を使用して、アジア海域でクロロフィル蛍光度を計測しました。使用したセンサの精度は以下のとおりです。
クロロフィル蛍光: |
(特定の植物プランクトン換算値で)0.025ug/lit. |
表示されているセンサの精度をどのように検証して計測されたデータの品質を高めるか、VOS船の船底から取り入れられた海水がセンサに到達するまでに受ける可能性がある影響の定量化、閉鎖流水で安定的に自動計測できる新たな計測項目用のセンサの採用、などが今後の課題です。
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